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製造業の設備保全をAIで考える|事後・予防・予知の使い分け

導入・進め方

製造業の設備保全をAIで考える|事後・予防・予知の使い分け

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この記事を読むとわかること

設備保全には事後・予防・予知の3戦略があり、すべての設備に予知保全は非現実的です。設備の重要度で使い分ける設備ポートフォリオ設計が本質で、AIが効くのは予知保全領域です。データ取得の前にKPI設計を先に行うことで、PoC失敗を回避できます。読み終える頃には、自社の設備をどう分類し、どの設備から予知保全に着手すべきかが判断できるようになります。

事後・予防・予知の3戦略と使い分け

設備保全は製造業の安定稼働を支える基盤業務です。経済産業省「2025年版 ものづくり白書」でも、設備保全のDX化が中小製造業の重要課題として挙げられています。保全戦略は3つに分かれます。

設備保全の3戦略
戦略1

事後保全(BM)

Breakdown Maintenance

  • タイミング故障してから修理
  • コスト低(故障時は高)
  • 向き予備品・非重要設備
戦略2

予防保全(PM)

Preventive Maintenance

  • タイミング定期的に点検・部品交換
  • コスト
  • 向き標準的な設備
戦略3

予知保全(PdM)

Predictive Maintenance

  • タイミングAIが故障予測時のみ
  • コスト初期高、運用低
  • 向き重要設備・停止コスト大

「すべての設備を予知保全」は理想ですが現実的ではありません。重要設備のみ予知、それ以外は予防、で組み合わせるのがコスト最適化の基本です。判断軸は4つあります。設備停止コスト(1時間止まると損失いくらか)、故障頻度(過去の故障履歴)、修理難易度(部品調達期間)、代替手段(別設備で代替可能か)、これらを総合的に考慮することになります。

AIが効くのは予知保全、理由とアプローチ

J-STAGE「予知保全のための機械学習」(SCIE)でも詳しい通り、AIが予知保全に効く理由は3つあります。第一に多変量の同時監視が可能なことで、温度・振動・電流・音など複数センサーを統合判断できます。第二に微弱な異常も検知できることで、人間が見落とすパターンを学習可能です。第三に24時間稼働が可能なことで、監視員の交代が不要になります。これにより、故障の数日〜数週間前に予兆を捉えて計画停止が可能になります。

予知保全のAI実装は大きく3アプローチに分かれます。第一は異常検知で、正常状態のデータを学習し平常状態から逸脱を検出します。少ないデータでも開始可能な点が利点です。第二は残存寿命予測(RUL)で、故障パターンを学習し「あと何時間で故障」を予測します。故障データが必要になります。第三は物理モデルとAIの組み合わせで、摩耗・温度変化の物理モデルとAIを組み合わせるアプローチです。精度は高くなりますが設計工数も大きくなります。

中小製造業がまず取り組むべきは第一の異常検知です。正常データだけで学習可能なため、故障事例が少ない企業でも始められる現実的なアプローチです。

データ取得の前にKPI設計を

「予知保全したい」と言われるとすぐにセンサー設置の話になりますが、当社の経験では先にKPI設計が必要です。設備保全の代表KPIとしては、平均故障間隔を示すMTBF、平均修理時間を示すMTTR、計画稼働と実稼働の比である設備稼働率(85%以上が目安)、設備総合効率を示すOEE、突発故障による計画外停止時間、といった指標があります。

これらが測れていない状態でセンサー設置しても、改善が見えません。「何のために計測するか」が決まらない投資は、コスト先行で効果不明な結果になりがちです。詳細はOEE(設備総合効率)と稼働率を参照してください。KPI設計を先に行うことで、データ取得の粒度・対象設備・分析方法が決まり、無駄のない投資設計ができます。

中小製造業が陥る3つの罠

経済産業省「Connected Industries」の政策的議論も踏まえた、典型的失敗パターンを3つ挙げます。

第一の罠はすべての設備にセンサーを設置することです。全設備にIoTを入れるとコストが爆発し、データ管理も破綻します。重要設備に絞ることが、投資対効果を確保する前提です。

第二の罠はAIを入れて満足することです。モデル構築まではゴールに見えても、運用が定着しません。アラートを誰が見て、誰が判断して、誰が止めるか、こうした運用フローまで設計しないと、PoCで終わってしまいます。改善PDCAサイクルまで設計が必要です。

第三の罠は既存保全員のスキルを軽視することです。ベテランの暗黙知がAIに移し切れず若手が困ってしまうケースが多発します。ベテランの知見ヒアリングを並行実施し、暗黙知をAI学習データに組み込む設計が、AI導入を組織能力として定着させる前提条件です。

段階導入ロードマップとROI試算

中小製造業の現実的な段階アプローチを整理します。

設備保全DX 4段階
1
Phase 1

KPI整備

MTBF/MTTR/稼働率の計測

2
Phase 2

予防保全強化

計画保全のExcel管理

3
Phase 3

重要設備の予知保全

PoCで効果検証

4
Phase 4

全社展開

重要設備の予知保全展開

「Phase 3に飛ぶ前にPhase 1〜2が必須」というのが当社の整理です。ROI試算の項目は、計画外停止削減×1時間あたり粗利、予備部品在庫圧縮、保全工数削減、の3要素を合算します。重要設備で初年度〜2年で回収できるなら投資対効果ありと判断できます。

よくある質問

Q1. 予知保全のROIはどう試算するか

計画外停止削減×1時間あたり粗利、予備部品在庫圧縮、保全工数削減、の3要素を合算するのが基本です。重要設備で初年度〜2年で回収できるなら投資対効果ありと判断できます。

Q2. 古い設備にも予知保全は適用できるか

後付けセンサーで対応可能です。ただし、設備側にデジタル出力がない場合、後付けの工数が大きいため、ROI試算を慎重に行う必要があります。

Q3. 設備保全と保守の違いは

保全は故障を未然に防ぐ+修理を意味し、保守は維持管理を意味します。両者はほぼ同義で使われますが、設備保全の方が広い概念です。


主な引用元

公益社団法人 日本プラントメンテナンス協会(JIPM)J-STAGE「予知保全のための機械学習」(SCIE)日本機械学会論文集A編(J-STAGE)


Delight Flowでは、設備保全戦略の設計、予知保全AIのPoC・実装まで一貫した伴走を行っています。無料診断実施中です。お気軽にご相談ください

最後までお読みいただきありがとうございました。

代表取締役 村田 凌

執筆者

村田 凌

株式会社Delight Flow 代表取締役CEO

外資系コンサルティングファームにて金融会社のサイバーセキュリティ戦略構築支援に従事した後、東京大学にてAIの研究に取り組む。現在は工学系研究科博士課程に在籍。国際論文誌、学会誌での受賞歴を多数持つ。

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